この記事は Rust Advent Calendar 2020 その3の4日目の記事です。今日は Rust に関する話ではあるのですが、技術的な話ではない記事になってしまうことをお許しください。
1ヶ月ほど経ってしまいましたが、Rust の全世界的なカンファレンス RustFest Global を、11/7〜11/8で開催しました。スピーカーとして参加してくださった皆さん、また RustFest Global に遊びに来てくださった皆さん、ありがとうございました。
今日はその RustFest Global に関する話を書きたいと思います。ちなみに多分この記事を Google 翻訳にかけて読まれる海外の方も多いと思うので、先に書きます。英語にするので少しお待ち下さい!
For non Japanese speakers: I'm going to jot down my thoughts regarding RustFest Global. Unfortunately, there is no English version right now. I'm planning to translate this post into English soon. Please gimme a moment!
RustFest Global とは?
ヨーロッパの RustFest チームの声掛けで始まった、複数のタイムゾーンにまたがる Rust カンファレンス
たしか夏前だったと思いますが、RustFest チームからの声掛けで、今回 Rust.Tokyo のチームもこのカンファレンスの運営に参加することになりました。
RustFest チームというのはヨーロッパ圏の Rust カンファレンスを開くチームで、ヨーロッパで毎年カンファレンスを開催しています。前回はバルセロナだったと思います。実は去年の Rust.Tokyo にて、Rust コアチームの Florian Gilcher 氏が基調講演を行ってくれましたが、彼も RustFest チームの主催者の一人でした。現在は卒業生のようです。
Rust.Tokyo は今年は中止の判断をしていた
私たち Rust.Tokyo のチームは、今年は Rust.Tokyo を実施しないという判断をしていました。理由はご多分に漏れずコロナウィルスです。中止の判断をした4月時点では、コロナウィルスがいつ収まりを見せるか、あるいはどのように今後感染拡大していくのかがまったく見えない状態でした。周りのカンファレンスも中止の判断をしているところが多かったというのもあります。
しかし一方で、2020年になって Rust はさらに広まりを見せ、私自身も本を共著で出版させてもらうなど盛り上がりを感じていました。そのような状況でカンファレンスを今年は開けないというのは、少し歯がゆい思いがありました。
そんななかでの RustFest チームからの声掛けということもあり、Rust.Tokyo としてもぜひ、ということで運営に参加することになりました。
ラテンアメリカのチームも一緒に運営をすることに
Rust.Tokyo 以外には、日本のユーザーの方は本当にあまり馴染みがないかもしれませんが、Rust LATAM というラテンアメリカのチームも運営に参加することになりました。彼らはアルゼンチンなどに済んでいるようです。日本の真裏、12時間の時差です。
開催まで
毎週ヨーロッパとラテンアメリカと一緒にミーティング
開催までは、毎週ヨーロッパとラテンアメリカ、ならびに日本のチームが Zoom で集まってミーティングを行いました。
グローバル規模で会議をすることになって大変だったのは時差の問題です。JST では1時開始のミーティングでした。ラテンアメリカチームが入ってきて、JST で19時スタート(ラテンアメリカは朝の7時スタート)のミーティングも追加され、隔週で時間帯をラテンアメリカと交代しながら行いました。
私は普段は英語はそれなりに聞けるのですが*1、夜中の1時に第二外国語を聞くのはなかなかハードでした笑。でも、毎週のミーティングは楽しかったです :)
翻訳チームの結成
今回のカンファレンスは「グローバルである」ことにとてもこだわっていました。つまり、Rust.Tokyo は日本だけでなくアジア太平洋地域(APAC)の担当をすることが期待されていました。
本来であればアジアの様々な国の言葉に英語の文章をローカライズして提供するべきだったのですが、参加者の人口比やツテの問題などを考慮して、韓国語と中国語(簡体字、繁体字)の翻訳ができる方を募集しました。
韓国語については Enwei Jin さん、中国語の簡体字については Xidorn Quan さん、繁体字については Rust.Tokyo にも参加してくれた Cheng You Bai さんと Kan-Ru Chen さんが担当してくださいました。
改めてお礼をさせてください!本当にありがとうございました。Thank you for the translation team! I appreciate your swift & professional work.
翻訳チームとは基本的にすべて英語でやりとりをしました。英語は世界の標準語になっていますね。
翻訳チームには、主に RustFest のアカウントで告知される内容の翻訳と、CfP に際してサイトに掲載された文章を翻訳していただきました。たとえばこのような感じに。
还有一周 RustFest Global 就要开始啦!🤩
— Rust.Tokyo (@rustlang_tokyo) October 28, 2020
在此期间,我们正在寻找在日本或其他亚洲国家会做草图笔记(sketchnoting)的朋友——如果您有推荐人选,请与我们联系!🦀
RustFest이 일주일 뒤에 시작됩니다! 🤩 아울러 일본을 포함한 아시아 지역에서 스케치노팅 (Sketchnoting) 을 하실 분을 구하고 있으니 관심 있으신 분들의 연락을 바랍니다! 🦀
— Rust.Tokyo (@rustlang_tokyo) October 28, 2020
再過一週 RustFest Global 即將要舉辦了!🤩
— Rust.Tokyo (@rustlang_tokyo) October 28, 2020
此外,我們正在尋找在日本或是其他亞洲國家會做插畫筆記(sketchnoting)的朋友!如果您有任何推薦人選,歡迎隨時聯絡我們!🦀
全然話が逸れますが、個人的には、実際に翻訳されてあがってきた文章を見ながら「この言語ではこういう言い方をするんだ〜」というのを知ることができてとてもおもしろかったです。私は韓国系のドラマや YouTuber を見るのが好きで、韓国語を少しだけ勉強しているというのもあり、韓国語はとくに勉強になりました。できれば英語の字幕なしでそうした番組や YouTube の動画を観られるようになりたい…。
発表が英語でなかった場合の事前字幕付け
発表者が英語話者でない場合も想定していました。その場合には事前にプレゼンテーションを録画してもらい、その録画内容に字幕をつけることで対応という形になりました。
結果、日本から参加してくださったスピーカーの方は日本語でお話いただきました。ほかは、すべて英語のセッションとなりました。
字幕自体はプロの翻訳の会社に依頼してつけてもらいました。できあがった成果物について、スピーカーが話している内容と字幕の表示される内容があっているか、また字幕が表示されるタイミングは正しいかを確認しました。
準備
準備のほとんどは RustFest チームが行ってくれました。改めて本当にありがとうございました。
- スピーカーの募集
- スポンサーの募集
- アーティストの募集
- スケッチノーターの募集
- 使用するツールの手配
- 翻訳業者の手配
などを行っていました。
日本のカンファレンスと圧倒的に違うと感じたのは、アーティストの募集とスケッチノーターの募集でした。アーティストによる演奏があるカンファレンスは、日本ではまったく見ませんね。海外系のカンファレンスだと結構見るのでわりと一般的だと思います。アメリカの Rust のカンファレンスの RustConf は演奏していたような気がします。
RustFest Global 2020 is almost over, but make sure you don’t miss the last performance by @linalab && !ME, an exploration about the analogue and manual side of both music and visuals. Tune in on https://t.co/yLfjDUFuNF and celebrate the ending with us! 🥳 pic.twitter.com/e3RBQV1S9G
— RustFest (@RustFest) November 7, 2020
スケッチノートというのは、日本でもカンファレンスに参加した方がボランティアで SNS などに流してくださるのを見ることはあるかもしれません。一方で、このように公式に募集しているカンファレンスは、私の知っている範囲が狭いだけかもしれませんが、カンファレンスサイドが公式に募集しているのは日本ではあまり見ないように思います。
"Learnable Programming with Rust" by Nikita Baksalyar. Sketchnotes by @malweene ✨#RustFestGlobal #RustFest2020 #Sketchnotes pic.twitter.com/XUU7pG4GuI
— RustFest (@RustFest) November 7, 2020
ヨーロッパ圏というか欧米圏は、このようにアートも含めて「場」を設計するところに力を注いでいるところがとても見習うべきポイントだなと個人的には思いました。神は細部に宿る、のかもしれません。
(日本におけるアートの立ち位置は、今回のイベントのように(ヨーロッパのような)積極的に「場」に入れ込んでいくという立ち位置では必ずしもないように思います。日常にアートがそこまで入り込んでいないという感じがあります。東京には美術館は多いんですけどね。カンファレンスや人が集まった際、ふとした瞬間にアートを入れようとはならないのだと思います。私だけかもしれませんが、「何かこう、気合いをいれて楽しむもの」という印象が強いかもしれません。なので、カンファレンスとアートを融合させようという発想にそもそも至りません。ヨーロッパ圏とアジア圏のアートの考え方やアートへの接し方の違いはとても興味がわきました。)
あつ森のグッズ
同じく RustFest 主催者の Pillar さんがあつ森用のグッズを作ってくれたので、記念にもらって撮影してみました。
今年はカンファレンスTシャツを待つ必要はありません!みなさんのあつ森の島で、自分専用の #RustFest2020 カンファレンスTシャツを手に入れましょう!!!✨
— Rust.Tokyo (@rustlang_tokyo) November 6, 2020
👇マイデザインはこちらから👇
T-Shirt: MO-SH4V-1M9J-75XG
Dress: MO-2NX2-D6WK-6CKF pic.twitter.com/kTjnnKbmZd
めっちゃかわいいのである。
当日
チャットルームのモデレータ
私は主にチャットルームのモデレータをしていました。Code of Conduct に反する発言をする人がいないかを監視していました。
途中で「資本主義とはなんたるか、あなたはどう思うか」というコメントが始まって、テックイベントで政治的発言は大丈夫なのかな…と思う場面もありましたが、スピーカーの方が機転を利かせて「あとは DM しよ!」と言ってくれていて内心かなりホッとする出来事がありました笑。
結局まあまあ見てしまった
20時間にも及ぶカンファレンスでしたが、日本時間であれば、開始からラテンアメリカの途中までは見られるタイムスケジュールでした。どのセッションもおもしろく、ところどころ休憩を取りながらすべてのブロックを一通り見ることができました。
次々に日が昇っていく
運営のチャットルームがあったんですが、APAC が終わったくらいで日が昇ってくる写真がヨーロッパから投稿されるなど、ワイワイ楽しくやっていました。
日本は日本から開始すると一番早く日がのぼっている国で、ヨーロッパが次に日が昇り、ラテンアメリカが最後に日が昇るという感じでした。実はラテンアメリカの方は APAC のセッションの方の最初の方は見てくれていて、最初のプレゼンテーションの前には「gambatte!」というコメントをくれてとてもほっこりしました。
難しいと感じたこと
英語の壁
日本向けのカンファレンスではないので仕方がありませんが、やはり英語のセッションのときは如実にTwitterやチャットルームのリアクションが減ってしまったように思いました。英語、大変ですよね。私もネイティブスピーカーというわけではないので、英語を使う際は少し頭を切り替えないといけません。
日本に住んでいると、英語を使う機会がそもそもありませんよね。英語を見ない・聞かない・話さない日が大半だと思います。自分から注意深く英語のコンテンツを見るようにしないと、なかなか触れる機会がないと思います。これは、地政学的な要因や文化的な要因が絡んでいて、致し方ない問題だと思います。
英語の壁の突破策は、やはり同時通訳なのでしょう。ScalaMatsuri などでは同時通訳で日本語→英語訳、あるいは英語→日本語訳が聞けたりしますが、そうした施策はやはり有用なのだなあと思いました。こうした同時通訳の用意などは、今回感じた「完全なローカライゼーション」への課題感にもつながっていきます。
すべての人が楽しめるカンファレンスにするために、言語の障壁はできる限り取り払わなければならないというのは、去年の Rust.Tokyo でも感じたことでした。
「完全な」ローカライゼーション
ローカライゼーションというのは難しいですね。日本語訳を用意することはもちろんローカライゼーションの一つではあるのですが、それだけでは足りないことがあります。
たとえば最近あがっていた記事でおもしろかったものなのですが、海外サイトのローカライゼーションだけでも、これだけ気にしなければならないことが出てきます。デザインだけでなく、よく使われる言葉やキャッチコピーに変えるなどの対応も必要になってきます。
ツールに関するローカライゼーションなどもあるでしょう。たとえばメッセージングアプリに関して言えば、海外では WhatsApp が大半ですが日本では LINE が大半といった具合にです。日本では使い慣れないツールを使う必要が出てくると、どうしても操作に慣れなくてストレスが…といったこともあるかもしれません。
要するに、言語の翻訳だけではなく文化の翻訳も本来は行う必要がある、ということです。
しかし、こうしたローカライゼーションは完全対応しようとすると、費用と人がより多く必要になります。限られた資源の中で適切なローカライゼーションを優先順位をつけて行っていく必要があるというのが現実です。的確なローカライゼーション施策を打つのはとても難しいのだなあと思いました。
来年以降
RustFest Project 始動
まだ詳細は未定の部分が多いですが、RustFest Project が始動します。
これは、たとえば今はコミュニティが存在しない国や地域で新しくコミュニティを立ち上げたい!となった際に、RustFest Project がいろいろノウハウや資金面でコミュニティの立ち上げや運営を援助できる仕組みです。
予算の使途などをオープンに管理するために下記のページで今後予算状況や何に使用したかなどを知ることができます。ならびに、金銭的なコントリビューションをこのページから応募することもできます。
技術とコミュニティは密接な関係にあります。その技術が、いい形で普及するかどうか、また発展するかどうかはコミュニティの力にかかっています。こうした、 Rust がコミュニティを大切にする姿勢は、Rust の好きなところのひとつでもあります。
遊びに行きたい
コロナ終わってたら来年の RustFest と Rust LATAM に遊びに行きたいです!